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しっかり目を見て | 武田流心くばり介護道/介護傾聴師養成講座ブログ「最上級の介護サービスとは」

しっかり目を見て
「私はもうお花をやめます」とおっしゃって参加をしなくなってしまった施設入居者の M子さんでした。生け花をなさっていらしたこともあって、自然を感じながら花を一輪一輪大切にオアシスに挿していらっしゃいました。
M子さんは車いすでしたが、いつも背中をまっすぐに凛としてお花に向かっていらっしゃいました。プライドもあって、誰よりも上手く出来るという自負を持っていらっしゃいました。でもだんだん手が不自由になってお花を挿す力が出せなくなっていらっしゃるのがわかりました。力が入らなくなってしまうと、ピンポイントに花を挿すことも難しくなって、ご自分の思う通りのデザインになっていないことに、自分を許せなくなっているイライラ感が伝わってきました。
「そうか、M子さんのお気持ちもわかるな、でも機能回復の訓練になることを伝えたらお気持ちが変わるかもしれない」と簡単に考えていた私は、職員の方を通して話を伝えていただきました。M子さんのお気持ちは変わりませんでした。無理強いすることも良くないので、お気持ちを尊重いたしました。
 しかししばらくするとまた参加されるようになって一生懸命お花に向き合っていらっしゃいましたが、その様子は以前のように明るい表情ではなく口を真一文字に結んで眼だけが動いていました。病状が進行していらっしゃるようでした。でも参加してくださることがとっても嬉しかったので沢山話しかけました。それから車いすではなくベッドでの参加になり、ご自分で花を挿すことが出来なくなりました。職員の方が代わりにお花を挿してそれをご覧になっていらっしゃいました。本当はお花を生けることが大好きなM子さんですから、きっとご自分でなさりたいのでしょう。何か刺激を与えてあげたいと、M子さんの傍に花を持って行き香りを嗅いでいただいたり、触っていただきました。すると「うんうん」とうなずいていらっしゃいます。もしかしたら、と思いオアシスの入った器を私がしっかりと持ってお花を渡すと、その花を手に取り器に向けてぐっと押し出しました。見事にオアシスに刺さり、1本1本次から次へと出来上がっていきます。私は思わず「ステキ、とても上手です、うまく入っていますね」と声に出すと、私の目をしっかりと見て「うんうん」とうなずきました。職員にそのことを話すと「へ〜っ!そうなんですか?」と、とてもびっくりしていました。M子さんと私は毎回必ずそのようなやりとりをして、歌も傍で歌うと覚えている歌は少しですが歌詞を声に出すのです。感激して職員に話すと「へ〜っ、歌を歌いましたか?言葉はでてきましたか」との返答でした。もっと早くに関われば、M子さんの満足度は高かったと思います。先月も一緒にお花を活けて歌を歌いました。きっとお花の時間はM子さんには嬉しく楽しい時間だったと思います。今月のイベント参加者のリストにM子さんの訃報が記されてありました。M子さんから見せていただいた奇跡と限りない人間の可能性に喜び、感謝しかありません。
堺野 幸枝

堺野 幸枝 (さかいの さちえ)
武田流心くばり介護道®/介護傾聴師®養成講座
師範・教授格
NPO/特定非営利活動法人
日本エイジング・アドバイザー協会 理事
プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/
エイジング・アドバイザー®
認定エグゼクティブ・コーチ
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